2006年 9月12日
ご関係の皆様
天文教育普及研究会        
会長 松村雅文(香川大学教育学部教授)


「惑星の定義」の教育現場における活用について(要望)


   2006年8月24日、国際天文学連合(IAU)の総会において「惑星の定義」が決議されました。報道では「冥王星騒動」「冥王星降格」などのネガティブな印象の言葉が多く使われていますが、この決議は近年の観測天文学、惑星形成理論、太陽系探査など、天文学、惑星科学の大きな進展に基づくものであり、科学が着実に進歩していることを示す好例にほかなりません。

 本会としては、教育現場においてこの話題が積極的に活用されることを期 待し、以下の点について、関係各方面の皆様のご配慮、ご協力をいただきま すようお願いいたします。

 1.学校教育および社会教育においては、今回の決議は、太陽系についての最新像を伝える機会であるとともに、教科書に掲載されていることがらであっても、自然科学の進歩によって書き換えられるものであることを示唆する上でも貴重です。各教育現場で、それぞれの発達段階に応じた適切な指導がなされることを期待します。(*)

 2.報道および科学ジャーナリズムにおいては、科学の進歩について、前向きな見方ができるような伝え方にもご配慮頂けるように要望いたします。

 3.決議に関連して教科書等で使われる用語等については、学校現場等で事前調査をするなど、児童・生徒に与える印象等にも考慮して決定されることを要望いたします。

(*)学校教育関係者の皆様には、具体的に次のことを期待いたします。
・小学校理科:
現在の教科書には太陽系についての扱いがなされていませんが、小学生は天文について強い興味を持っています。この機会に、報道などを題材にして、あるいは教科書の発展的内容で太陽系を取り上げるなどして、科学は生きているものであり、その進歩によっては自然の見方が変わりうることの例として、扱っていただきたいと考えます。
・中学校理科:
太陽系のつくりに関連して、冥王星を例に、海王星以遠の部分について学ぶ機会とされることを期待します。
・高校理科:
地球の誕生や惑星の特徴などの学習の中で、最新の太陽系像を伝える機会として、決議の内容を活用されることを期待します。


[付記]
 当研究会としても、新たな惑星の定義の普及、dwarf planetなど邦訳未定の訳語の提案等について、教育現場での児童・生徒へのリサーチを踏まえ、教育的見地から積極的に関わっていく所存です。



   

天文教育普及研究会 Japanese Society for Education and Popularization of Astronomy