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2016年 会長からの新年のメッセージ


2016年を迎えて −熟考そして実行へ−

新春の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。昨年も本会への協力・支援等、多くの方々から賜れましたこと、心より御礼申し上げます。本年もよろしくお願いします。

皆さんは、天文・宇宙への世間からの関心が年々高まっていることを感じることはありませんか?例えば、昨年12月の新聞・テレビやネット上の話題を振り返ると、はやぶさ2の地球スイングバイ(3日)、あかつきの金星軌道再投入(7日)、ノーベル賞授賞式(10日)、油井亀美也宇宙飛行士のISSからの帰還(11日)、ふたご座流星群(13日)と連日のように宇宙の話題がトップニュースまたはそれに近い扱いでした。また、2015年に流行した言葉の例として、ユーキャン新語・流行語大賞の候補50ワードの中に、「爆買」や「安心して下さい、穿いてますよ」などと並んで「スーパームーン」がノミネートされています。さらにオリオン座流星群など、都市部ではほとんど期待できない流星群に関しても、過剰に報道されSNS上で盛り上がるなどの現象が生じました。「宙ガール」もすでに一部の存在ではなく、身近な星好きの女の子たちとして広く認識されるようになりました。

このような天文・宇宙への関心の高まりに対し、天文教育普及の担い手たちは、正確でかつ人々の意欲・関心が継続するような情報提供や天文・宇宙を身近な場面で気軽に楽しめるような機会や場づくりに成功しているのでしょうか?・・・安心して下さい(!?)。年6回出版されている当会の「天文教育」誌や年1回当会が夏に開催する天文教育研究会の集録を読むと、または、全国各地で開催されている当会支部集会に参加してみると、学校や生涯学習における天文教育のみならず、天文・宇宙のありとあらゆる科学コミュニケーション活動が、全国津々浦々で、極めて多様に重層的に行われていることが分かります。

しかし、国内に限ってみても人口1億を超える日本において、会員数が650名程度の本研究会は世間から認知されていないばかりか、その活動と接点を持った大人も子供もごく僅かに過ぎません。まずは1千人規模の会員数を目標に掲げた現執行部でもその目標達成への道筋を明確に描けないままです。

そもそも、本会及び本会会員のみの活動で、天文教育や天文系の科学コミュニケーションが推進されている訳では全くありません。天文普及に関心を持ち、同じ目的や目標を掲げて前進しようとする多くの個人や関連団体・組織等とどのように情報を共有し活動を協同・連携させていくのか?例えば、国際光年2015「宇宙からの光」を推進する上で、現状に不満を感じた方もいらっしゃることでしょう。つまり、個別に見ると本会の活動は充実し活発とはいえ、対象となるフレームを国民全員へと広げた途端、安心どころかその活動の端緒にも程遠い現状が見えてきます。

検討すべき一つの方向性として、日本サッカー協会のような活動的な組織を目指すべきではないでしょうか?(公財)日本サッカー協会の目的は「サッカー競技の普及および振興を図り、もって国民の心身の健全な発達に寄与すること」。1921年の設立です。スポーツ同様に科学も人々にとって身近な存在になることが今日、望まれています。特に天文・宇宙分野への期待は高まっていますし、人びとの幸福実現に寄与しうる実例や実績を私たちは積みつつあります。実現までは長い長い道のりになるかもしれませんが、2016年、まずは多くの方々と議論し、熟考を重ねたいと思います。


2016年1月 天文教育普及研究会
会長  縣 秀彦



   

天文教育普及研究会 Japanese Society for Education and Popularization of Astronomy